ファクトリーオートメーション(FA)
プロセスオートメーション(PA)

印刷産業での安全スタックターナーと物流システム

モジュール式安全システムを活用し合理化を実現

安全技術は、ここ数年の間、はるかに高度になり多くの用途に使われるようになってきました。非常に速いスピードを持つ重作業機械には、効率的なロジスティクスシステムが必要です。機械工学を専門にしているKrifft & Zipsner社での活用方法は、印刷業と紙産業での代表的な例です。同社は、ロジスティクスと印刷準備のための重要なパートナーです。Krifft & Zipsner社では、Pepperl Fuchs社の安全技術を用いたSafeboxを利用しています。SafeBoxのコンパクトな設計、高いフレキシビリティ、簡単構成は、合理的な安全監視システム作りに役立っています。



図1.印刷シートの積上げ回転機

機械工学産業において、印刷機は最も複雑で高価な機械のひとつです。その高い取得コストを確実に回収するため、機械のダウンタイムを抑えていかなければなりません。高い印刷能力を保つには、自動化した物流プロセスが非常に重要です。印刷物は、スムーズにフィーダーに送られ、処理されなくてはなりません。機械が不要に停止するたびに、印刷とインクのパラメーターをリセットして最適化しなければならず、その処理に余分な時間と廃棄物、コストがかかってしまいます。


重作業機械にとって欠かせないスムーズなロジスティクス

Steinebach/Siegに拠点を置くKrifft & Zipsner社は、50人の従業員を擁し、パンチングと印刷機器分野での自動化されたロジスティクスを専門にした事業で、この分野では最先端技術を使用した製品開発を行っていることで知られています。紙そろえ機と通風装置を備えたインテリジェント積上げ回転機、移動カート、回転円板・ローラー、チェーンとベルトコンベヤおよびエレベーターなどの垂直コンベヤーを製造しています。

同社が採用しているロジスティクスシステムは、作業員の負荷を軽減しながら一貫した高い生産性をノンストップで維持しており、印刷機器とパンチング機器の排紙と給紙を自動化させています。Krifft & Zipsner社のシステムマネージャーであるフランク・シュミット氏は次のように語っています。「当社の特長のひとつは、部品や製品がラックから外れないというところです。我々は、そのようなことがないようシステムの設計カスタム化を行い、従来のシステムと円滑に統合できるようにしました」


回転、紙そろえ、通風の処理をひとつに

厚紙または印刷シートは、単用パレットを含む多種類のパレットをもつ印刷機のオペレーターに送られていきます。そのパレットは移動カートに乗せられ、積上げ回転機から受入用の格納場所へと運ばれていきます。これは印刷準備の処理の中で重要な役割となっています。印刷物がどのくらい保管されるかによっては、その積み重ねの重さが一枚一枚のシートを互いに付着させることがあり、特に全体の重さを支える積み重ねの下方部分にそれは発生します。

複数のシートをフィーダー部分に置いておくことは、印刷機の工程を中断させてしまう可能性があります。積上げ回転機の使用により、印刷シートの積み重ねを180度回転させることができ、印刷機の中断を防ぐことが可能になります。この工程では、印刷シートが揃えられ、通風が行われた後、対応装置に対してまっすぐに並べられます。その後、積上げ回転機は木製パレットや単用パレットを移動させ、それをシステムパレットに置き換えます。そのように処理され綺麗に並べられた紙の束は、印刷プロセスに送るための準備が整っている状態になっています。排紙時にシステムパレットと呼ばれるノンストップパレット上に積上げられた印刷シートは、必ず中心にセットされていなければなりません。印刷シートは移動カートに乗せられて印刷機に運ばれます。


人の安全を守るセンサー

怪我を招く恐れのある機械に対しては、人の安全への配慮が必要です。正しい安全手順を行うことにより、オペレーターのエラーによる怪我を防ぐことができます。積上げ回転機は、1トンから1.5トンほどの印刷シートを乗せたパレットを動かせるだけの大きな力を使って積上げ束を移動させ揃え作業や通風を行っています(図1参照)。 機械上でオペレーターが接触可能な全ての部分は、光バリア光カーテンによって監視されています。Pepperl+Fuchs社のSLA29センサーは、安全用光バリアです。その検出範囲は、調整可能な鏡の範囲分を拡張することができます。潜在的な危険性に対応するため、オプションとしてSLC30の安全用光カーテンを取り付けて手の保護が必要になる場合があります。


自動積上げと荷下ろしのミュート設定

機械に積上げ物が自動的給紙・排出される時に安全システムの作動のために、ミュート装置が設置されています。4つの光センサを持つその装置は、ミュートセンサとして互いに向かい合ったペアの状態で位置しています。その検出範囲は、監視された経路の半分にセットされています。積荷が給紙・排出される方向によって、内側または外側のセンサがミュート状態に設定できます(図2参照)。



図2.ミュートセンサ

Krifft & Zipsner社では、自動化したロジスティクスシステムを利用して印刷機からの給紙と排出を行っています。SLP8-2光グリッドを搭載した印刷機によって、パレットアキュムレータまたはパレットディスペンサーでの危険な動作から保護しています(図3参照)。その光カーテンは二つのチャンネルを持つライトグリッドを搭載し、受動カラムおよび能動カラムを装備しています。能動カラムはエレメントの送受信を行うのに対し、受動カラムは主にビームを屈折させるための鏡で構成されています。よって、能動カラムのみが本体に接続されていなければなりません。



図3.パレットアキュムレータ

安全センサ全体を一つの評価システムで管理

全ての積上げ回転機の安全部品は、Pepperl+Fuchs社の安全評価システムに接続しています。このモジュラーシステムにより、小型から中型システムに装備された全ての安全センサとスイッチは必要な構成で設定されます。これまでKrifft & Zipsner社では、機械ごとに異なる製造元のスイッチング装置を四つも使用していました。例えば、光バリアにはSLVA-4K評価装置を使用し、ミュート状態の光バリアにはSLVA-8Kを使用していました。それら全ての機能は、Safeboxを採用することでより簡単に、より合理的になったのです。 Safeboxは、フレキシブルに機能モジュールを搭載できるバックプレーンと組み立て運搬装置で構成されています。幅広い設置サイズに対応し、2スロットから8スロットの最大32チャンネルを1チャンネルセンサおよび2チャンネルセンサに接続することができます。Safeboxは、EN 954-1のカテゴリ1から4に適合しており、全ての一般的な光電安全システム、機械安全システム、およびに安全スイッチに適合したシステムとなっています。また、システムコンポーネントの停止を遅延させるため、複数の緊急停止回路またはスイッチグループを搭載することが可能です。


コンピューターを使わずに構成可能

ロジスティクスのスペシャリストであるKrifft & Zipsner社がSafeboxを採用したもう一つの重要な理由は、コンピューターを使わずにSafebox の割り当てと設定を行えることです。システムを設定するためのプログラム、入出力の関連付け、アドレスの割り当てや配線増設作業は一切不要です。組立部に関する機能の設定はDIPスイッチで行い、装置の異なるスイッチグループは形式ごとや配列モジュールで定義付けることができます。

Safeboxは、IEC 61496-1およびEN 61508 (SIL3)に準じた認可に従い、カテゴリ0と1に対応した緊急停止機能、および異なるミュートタイプに対応しています。エラー発生時に、7セグメント表示器に表示されるエラーコードで明確なサービス情報を確認でき、そのモジュールに対するインジケーターランプが点灯することによりエラーの原因となる箇所を確実に特定することができます。RS485インターフェースを介すことにより、エラーコードとエラーログを必要に応じて出力することも可能です。


個別スイッチシステムから汎用安全バスまでの安全をトータルに管理

安全技術のプロダクトマネージャーであるジョアキム・アルバーツ氏は次のように語っています。「Safeboxは、タスクと適合可能なフレキシブルモジュラーシステムを提供することで、個別スイッチシステムのソリューションと高価なシステムのソリューションの間に存在するギャップを安全バスによって埋めることが可能です。今までは、別々の評価システムを使用したり、時には別のサプライヤーの光バリア、光カーテン、スイッチパネル、安全マット、非常停止スイッチなどが必要でした。Safeboxを導入することによって、一つのシステムに必要な部品の範囲を削減することが可能になり、たった数個の部品のみで対応できるため省スペースの実現も可能になったのです」